ドラマストーリー解説・考察

SPEC(スペック)

映画(SPEC 天)のストーリー
 2012年8月。東京湾の海上で、奇妙な事件が起きた。クルーザーボートの中で数人の男女がミイラ化して死んでいたのである。第一発見者によると、発見時ボート内は夏にもかかわらず異常に寒かったという。

 そんな中、当麻たちのもとに、警視総監の似内晶(にたない あきら)と内閣情報調査官の福富薫(ふくとみ かおる)が訪れた。しかしどこか様子がおかしい。まるで何かに操られているようであった。そしてその手には、クルーザーボートの事件についての資料が握られていた。

 早速捜査を開始する当麻と瀬文。猛暑の中、捜査する二人の前に5歳くらいの少女が現れた。

 「はい、パパ!」と言って、カキ氷を瀬文に差し出す少女。瀬文が戸惑っていると、保護者と思しき中年の女性が駆け寄ってきた。

 「何してるの!ほら、おじちゃんにカキ氷返しなさい!」

 「いえ、それは俺のではないです。元々お穣ちゃんが持ってましたよ」

 「え?私も買ってあげてないのに…。あの子の周りでは何か不思議なことが起きるのよね。」そう言って、少女と女性は去っていった。

 そんなとき、瀬文に美鈴から連絡が入る。どうやら何者かに追われているらしい。すぐに助けに向かう二人。しかし美鈴を追っていたのは内閣情報調査室(CIRO/サイロ)特務班所属の青池里子(あおいけ さとこ)−瀬文の元恋人であった。里子は美鈴がその能力によって、ある情報を得たのではないかと考えており、そのために美鈴を監視していた。

 里子には潤という娘がいた。それは瀬文にカキ氷を渡そうとした少女であった。は自分の子供かと思い悩む。だが、里子によれば、時期的には瀬文しかあり得ないがDNAも血液型も合致しないと言う。 そして潤もまたSPECホルダーであるという。

 ひとまず野々村の元で美鈴を預かることで里子を納得させた当麻は、餃子を食べながら美鈴に何を見たのか聞こうとした。

 その瞬間、再び時が止まった。

 そこにはニノマエがいた。

 時が止まった世界で当麻と美鈴を動かしたニノマエ。混乱する当麻。なぜなら当麻の能力で呼び出せるのは、死者に限るからである。ニノマエは、「あれは姉ちゃんに合わせて現れただけだよ」と言って笑った。そして当麻に仲間にならないかと誘った。

 ニノマエはSPECホルダーを束ねて世界をひっくり返そうとしていた。しかし当麻は応じなかった。憤るニノマエは「僕達の両親もSPECホルダーだったから殺されたんだよ。」と言った。そしてブブゼラたちを呼び寄せ、美鈴とともに消え去った。美鈴も既にニノマエの仲間になっていたのだ。

 その後当麻たちのもとに、犯行予告とも言えるDVDが届く。そこには御前会議の面々を殺害する3人のスペックホルダーが映っていた。マダム陽(マダムヤン)、伊藤敦史、そして、ニノマエである。 御前会議の面々は全員、影武者だったが、そこには内閣情報調査官の福富にいた。そして、体を変形させる能力を持つ伊藤により全員殺されていた。

 この危機に津田の宗家として正体を現した一柳は、対策班を招集する。そこには当麻、瀬文や里子の名もあった。対策会議を行おうとする中、似内と潤がニノマエにより誘拐されてしまう。再び映像を送りつけてきたニノマエ。 そこには殺された猫の映像が映っていた。そして 潤もこのように殺害するとの脅迫したのである。

 映像の発信元から所在を突き止めた津田は救出部隊を結成し、ニノマエのアジトを強襲する。ところが、そこに居たのはマダム陽であった。 突入した隊員は次々とミイラ化してしまう。この脅威に瀬文も危機に瀕していた。 マダム陽は冷気を操るスペックホルダー。 そして陽にたいして陰があるように、マダム陽には双子のマダム陰(マダムイン)が居た。 マダム陰は炎を操るSPECホルダーであった。冷気と炎により、フリーズドライの要領でミイラ化していたのだ。

 マダム陽の冷気の前に銃器は一切使えなくなった。そこへ、絶対零度用にグリース処理した銃を持った当麻が現れる。この銃により、マダム陽と陰は瀬文に射殺された。

 この光景を別のアジトから伊藤とともに眺めていたニノマエは、伊藤にアジトごと攻撃するよう命令する。 伊藤は触手のように手を伸ばすと、周辺を攻撃する。 この攻撃を受けて対策班は全滅の危機に陥る。しかし、ここで当麻の左腕が再び力を取り戻す。当麻は意識を失い、暴走する。そしてそのまま左手により、何かを召喚しようとしていた。それは冷泉や海野などのSPECホルダーではなく、異形のモノであった。とっさに瀬文が当麻を押さえつける。暴走した当麻は落ち着きを取り戻し、また、美鈴が伊藤を止めたことで、当麻たちは全滅を免れた。

 当麻の左腕の力は強大過ぎた。 当麻本人にも扱いきれない代物だったのである。悩む当麻は、瀬文の前で再び暴走する。 当麻を止めるために射殺しようとする瀬文。だが、瀬文にはそれが出来る筈がなかった。

 その様子を物陰から眺めていた野々村は2人に励ましの言葉をかける。この言葉を受けた当麻は、左腕の力抜きで再びニノマエとの対決に挑むことを決意する。

 そこに美鈴から電話がきた。 美鈴はニノマエの正体に気付いたと言う。 しかし、最後まで口にすることなく殺害されてしまうのだった―――。

 美鈴が殺害されたことで瀬文たちは激高する。 津田の号令で生き残りの対策班メンバーが集結し、当麻発案による作戦が実行に移されることになった。

 ニノマエの真のアジトを取り囲む当麻たち。 まずは以前と同じく毒霧で攻撃開始する。しかし、伊藤によりあっさりと噴霧器が破壊されてしまう。次いで突入した津田班もループ能力を持つSPECホルダーに遮られ進むことが出来ない。窮した津田は自身が身に着けた爆弾を抱え、特攻をかける。 この津田の犠牲により、突入班もろともループ能力を持つSPECホルダーも爆死した。

 ループが解除されたことで、当麻たちは遂にニノマエと対峙した。姉弟対決か……と思われたそのとき、当麻はニノマエが自身の弟である陽太とは別人であると断じる。

 そう、この一はオリジナルではなくクローンだったのだ。 本物のニノマエならば、猫を殺しはしない。仲間も見捨てない。 この事実に気付いた為に美鈴はニノマエから離反しようとし殺害されたのだった。
 
 しかしそれが明かされたところでニノマエの能力は、オリジナル同様に時間停止である。それに対し、既に疲労困憊の中、決着をつけようとする当麻たち。
先手必勝とばかりにニノマエに銃弾を撃ち込む。

 だが、ニノマエに銃弾の類は通用しない。 これまでと同じく跳ね返されてしまう。 当然目標は当麻である。 勝利を確信したニノマエ。
 
 しかしその視界に妙な釘が映る。それらは時間停止した世界で、空中からニノマエたちに向かって降り注いでいる。どうやら当麻が用意したもののようだ。
それを見つけた一はこれも当麻に突き刺してやろうと考えた。

 そっと釘に手を伸ばして弾丸と同様に当麻に跳ね返したニノマエ。しかしその釘には細いひもが繋がっていた。

 ニノマエがそれに気付いたときにはもう遅かった。釘には高い電圧がかけられていたのだ。以前当麻がしかけた罠と同様に電流がニノマエを貫いた。そしてその威力は以前の比ではなかった。一撃で致命傷となりうるものだった。

 時間停止を続けることが出来ず、吹き飛ばされるニノマエ。そして時間停止が解け、ニノマエと共に吹き飛ぶ伊藤。一方、ニノマエにより跳ね返された銃弾が当麻を襲う。そんな当麻を庇う瀬文。

 当麻は未だ瀕死のニノマエに止めを刺す。

 「アンタもまた犠牲者だった…。本当の敵は、アンタを作り出した奴らだ。」

 ニノマエが敗れたことで、伊藤も降伏した。 人質となった潤の行方は不明であったが、決着はついたのである。


 数時間後、当麻は病院で意識を取り戻した。そして瀬文も瀕死であったが、何とか一命を取り留めた。

 その時病院の屋上に4人のニノマエがいた。そう彼らもクローンである。

 「甘いんだよねー。

 「そうそう!一人いるってことは他にもいるってことなんだからさ!」

 復讐を誓う。ニノマエたち。しかし、その後ろに白い服に身を包んだ男がいた。そして、なんとその横には潤の姿もあった。

 身構えるニノマエたち。

 「誰だ?お前は!」

 「誰って…そうだなぁ。『世界』ってやつかな。」

 そう言って、男が手をかざすと、4人のニノマエが次々と消え去ってしまった。

 あとには男と潤の2人だけ残っていた…。
 


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