教育委員会の方針で、新宮小学校が廃校になるかもしれない、と聞いた成瀬誠一郎(江口洋介)は、何としても学校を守ろうと心に誓う。 そして、ともに話を聞いた脇谷九重郎(塩見三省)に、この件を内密にするよう念押しする。
学校へ戻った成瀬は、校庭で体育の授業をしている5年生を微笑ましく見る。 と、走りだそうとした原翔子(荒川ちか)が、その場にしゃがみ込んでしまう。 大橋仁(塚本高史)が駆け寄ると、翔子は過呼吸を起していた。
保健室に運ばれた翔子は落ち着きを取り戻すが、岡本幸恵(市川実和子)は、その様子から翔子がいじめなど、過度のストレスにさらされているのではないか、と言う。
その後、職員会議で翔子が何かに怯えているようだったと報告すると、桐原伊織(西島秀俊)は、家庭内暴力(DV)の可能性を示唆。 それを聞いた武市かの子(北乃きい)らは驚くが、桐原はDVを受けた児童が、いじめっこになるケースがある、と話す。
早速、成瀬は大橋とともに翔子の自宅を訪ねる。応対したのは翔子で、両親は留守にしているという。成瀬が家に上がろうとすると、翔子がそれを押し止め「不法侵入だ」と大声をあげた。
すると、その声を聞き兄のアキラ(竹内寿)が出てきた。アキラは、翔子の学校の校長だという成瀬に、礼儀正しくあいさつを返した。
結局、成瀬と大橋は家に上げてもらえず、引きあげることに。 その様子を、二階からアキラが見ていた。
その日の夜、翔子が自室のパソコンで「DV110番」というサイトを見ていると、アキラが部屋に来て、成瀬に自分のことを話しただろう、と迫ってくる。
翌朝、校長室にいた成瀬に、桐原がファイルを差し出した。 それは、ここ10年で、統廃合の候補にされながら廃校を免れた学校の資料だという。 現状を知った桐原は、その資料から対策を考えようというのだ。 と、かの子が駆け込んできて、翔子が病院に運ばれたと告げた。
病院に駆け付けた成瀬は、医師から、翔子のケガは捻挫だが、捻挫の仕方が不自然なのと、身体にいくつもアザがあることから、DVの可能性があると告げられる。
学校へ戻った成瀬は、かの子、大橋から、翔子の父親とは連絡がつかず、母親も多忙を理由に来院を拒否していると聞く。 そんな両親の態度に驚きつつも、成瀬は、大橋に5年生クラス全員で翔子の見舞いに行けるよう調整してほしいと頼む。それを了解した大橋は、 成瀬、かの子とともに5年生クラスの前にやってくる。
その頃、クラスでは、欠席している翔子を新たないじめのターゲットにしよう、と盛り上がっていた。
それを聞いた成瀬は教室に入り、いじめられる人間の心の痛みを考えたことがないのか、と聞く。
すると、児童たちはいじめっ子の翔子が罰を受けるのは当然だ、とか、いじめないと自分がいじめられる、などと、反論しはじめた。
自分に都合のよい屁理屈ばかり言う児童たちに怒った成瀬は、黒板を叩き、自分はこの手でお前らを殴って、自分が感じている痛みを教えてやりたいが、それはしない、なぜならば、自分のなかにお前たちへの愛がないからだと告げた。
人の心の痛みがわからない、想像しようともしない、お前たちの本当の姿を知って、自分のなかの愛はきれいさっぱりなくなった、と言うのだ。 さらに、愛がないのに殴れば暴力になるから、自分は殴らない、と言い放った成瀬は「新宮小学校はつぶす」と宣言し、教室を後にした。
同じ頃、病院のベンチでアキラから立て続けに送られてくる携帯メールを見ていた翔子は、武市幹城(岸部一徳)に声をかけられた。 自分のことをあれこれ聞いてくる武市が煩わしい翔子は、松葉づえをつきながら、その場を立ち去った。
ところが、その後、再び武市に声をかけられた。
翔子がDVを受けていると確信した武市は、アキラが待つ家に帰る必要はない、うちに行こう、と誘うが、翔子は猛烈に反発。 すると、その拍子に松葉づえが武市の脚に当たってしまう。 驚く翔子に、武市は大丈夫だと言って、再度、うちに行こう、誘った。
が、次の瞬間、武市は苦しんで道端に倒れ込む。
その頃、校長室にいた成瀬は、桐原からもらった資料を見ながら、自分は一体何をやっていたんだ、と涙を浮かべていた――。
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